第1章

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この年の十月、遂に水晶宮で兵士採用試験が行われたが、定員百人で志願者二十人というひどい定員割れのため、階級選定のみとなった。 クリスティア兵の階級は、新入りを五等とし、試験で二等まで、そして二等の代表者を一等に任命とするシステム。 さらに各等級、力量順に一級から四級までの級が設定される。 階級選定とは、どんな試験をするのやら。 アルバート、ルイス、そして他の十八人、皆緊張しでいたが… …何のことはない。只の面接であった。 「サルーゼ・アグローヴァ」 「はい」 はじめの一人が呼び出された。 続いてテオドア・グレイ、ロイ・エーティル…ヘンリー・リステル、そしていよいよアルバートの番。 「アルバート・ミュール」 「はい」 面接室で待っていた面接官は、いかにも文官らしい雰囲気の真面目そうな青年だ。 しかも――驚いたことに、アルバートと同じギルヌ人であった。 「座ってください」 「はい」 煉瓦の壁が紅蓮の炎になったような気がした。 ――静まれ。落ち着くんだ。 「まず、志願の理由は?」 「はい。師の薦めです。かつて故郷で夜番をしていたためでしょう。私自身これには賛成しました。」 「なるほど。では次の質問です…」 質問はさらに八、九回続き、アルバートの試験は終わった。 部屋から出て、待合室に戻る。 入れ代わりに出てきたルイスに対して、アルバートは耳打ちした。 「落ち着いていけ」 ルイスも心得た、と首で示した。 そして、無事試験は終わった。 「結果を発表する」 一同、水を打ったようにしんと静かになる。 「サルーゼ・アグローヴァ、テオドア・グレイ、ロイ・エーティル、ワーダリアス・ハリエード…」 五人目…八人目…十三人目…十八人目… 「ディオール・ウィアン、アルティーレ・ゾーレン。以上十八名が…」 …合格者だ、とでも言いそうな雰囲気であったが… 「…以上十八名が第四級五等兵。アルバート・ミュールとルイス・セグニアの二名が第一級五等兵」 「!?」 アルバートは、宙に浮きそうな心持ちになった。
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