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ルイスがモルトに弟子入りしたのは十年前、六歳の頃だ。
当時クリスティアの下等兵士だったモルトの剣の腕前を、この時点で彼は既に知っていたというのだ。
モルトが兵長になると、たちまち弟子入り志願者が増加。
しかし誰一人としてルイスより年下の者はいなかった。
二年前にモルトが退役すると、更に志願者は増加。
そしてアルバートも入ってきた。
ルイスにしてみれば、初めて年下の弟弟子が出来たようなものである。
道場に最初に来る門下生はルイスである。
この日も表門を開け、中に入る。
「ルイス・セグニア、只今参りました。支度を始めます」
上の師範室からモルトの声。
「ああ」
それを聞き、ルイスは部屋に入る。
すると、中で人が寝ている。
自分より年下の少年だ。
「おい、ここで何をしているんだ?」
ルイスの声に、唸りながら起きる少年。
「…ああ、ルヴィか」
アルバートだった。
「なんだ、アルか。驚かすなよ。何でこんな所で寝ていたのさ?」
「はは…我ながらみっともない話だが、何せ寝坊は嫌だからな。そういう訳で、先生に許可を貰ってここに寝かせてもらったんだ」
ルイスの顔に疑いの表情が浮かぶ。
「嘘はよせよ」
「アルは嘘を言っていない」
急に後ろから声が掛かり、ルイスは振り向いた。
いつの間にやら、モルトがそこに立っていた。
「…先生、まさか本当に許可をしたのですか?」
「ああ。そんなに疑っているなら、これを見てみろ」
モルトの持っている帳面には、なるほど、確かにアルバートへの宿泊許可が書かれていた。
「アルの奴…」
笑いながら顔をしかめるルイス。
だが、それもその次のページを見るまでの事だった。
「…俺とアルを…先生が…クリスティア兵に…推薦…した…!?」
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