一ノ瀬楓と伊澄雛乃

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「なんで」 「だって。ヒナちゃん、いつもじゃない。たまには自分の力でやらなきゃ」 私がそう諭すと、ヒナちゃんはつーんと口を尖らせた。 「ちぇ、けち」 「はいはい」 ヒナちゃんはなにやら憎まれ口を叩いていたけれど、私は適当にあしらう。笑顔が溢れるのはもはや仕様といっていい。 こんなのは、私の部屋ではよくある光景だ。 数学や英語の授業では、毎回必ずといっていいほどの頻度で課題が出される。奇しくも、英語と数学はヒナちゃんの苦手な教科(まぁ、ヒナちゃんは他の教科も大して得意ではないけど)。 そんなわけで、ヒナちゃんが瞳に涙をためて「宿題教えてぇ」と頼みこんでくるのを、私がかるーくあしらう、っていうのが恒例行事みたいになっている。 だから、お母さんも笑っているだけで何も言わない。たまに「本当に仲が良いわね」って茶化してくるくらいだ。
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