一ノ瀬楓と伊澄雛乃

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「な、泣いてなんか……」 もはや子供のわがまま。背は高いし、モデル顔負けのプロポーションなのに。中身はすごく子供っぽいんだ、ヒナちゃんは。 どれだけ否定しても、その目に湛える涙を隠すことはできていない。 でも、ヒナちゃんのそんな不器用なとこが、私は大好き。 私だけに見せてくれる、ありのままのヒナちゃん。私だけの、ヒナちゃん。 仕方がないから、私が折れてあげることにした。 甘いなぁ、私。なんて自分を責めつつも、悪い気はしない。 「あぁ、もう。しょうがないなぁ、ヒナちゃんは」 私は鞄から数学の教科書とノートを取り出す。ちなみに、私は帰宅してすぐに宿題を終わらせたので、焦る必要はない。 「私は解き方を教えるだけだからね? あくまでも、解くのはヒナちゃん。それでもいい?」 「うー、ありがと、楓」 「それで、どこが分からないの?」 「えっと。あ、ここかな」 「ああ、この問題。これはね、この公式を使って…」 お互いに息がかかってしまうほどに身体が密着する。ヒナちゃんに寄り添って、私は教えた。
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