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満月がいつもよりも少し強い光を放っている夜。
高層ビルが立ち並ぶ中、更に高い一本の塔が建っている。人間達はこれを電波塔などと呼んでおり、特殊な電波を送受信している大きな建物。
本来、そこには誰も上ることは無い。それだけ高い場所。その塔の頂上に人影があった。
それはいうほど大きくは無い。中学一年生、若しくは小学校高学年子ぐらいの身長しかない。足を投げ出し座っている。
まるで日本人形に命を吹き込んだように顔立ちの整った少女。それが人影の正体だ。背中には、一本の大きな鎌を背負っている。少女には到底持てそうも無いほど大きなそれを、さも当然のようにからっている。
彼女は、影と呼ぶにふさわしかった。上から下まで黒い服で包みこみ、それと同じ色をしたきれいで長い髪の毛を風になびかせている。白い肌が露出している顔以外は全て黒い。淡い月明かりの中、遠くからみると真っ黒に見えてもおかしくはない。
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