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シェリー・クラウンの手記
…このままでは勝てない。
そう思った私は、目の前で自分を守ってボロ負けする巨大ロボットを背にして、旅立ちを決意した。
城に戻ってき社員証代わりに使われていた魔導ロザリオを王に突き返し、技術者仲間に挨拶をして城を出る。
あの日、空から落ちてきたこの石でジュエルクラウンを開発した私は、世界に巣食う正体不明の敵と戦う力を作れる者として、半ば強引に政府へ引き抜かれた。
特に目的などない私は世界レベルの技術に触れられるとあって快諾してしまう。
…だが甘かった。
設計図一つで戦況が変わるならとっくに勝利していたであろう。
…このままでは勝てない。
漠然とした想いはやがて形になる。
戦況を変え続けていた切り札のジュエルが倒されたことだ。
開発とは言っても独学で宝石を解析していただけの私に本体を制作するだけの力はなく、メンテ班にもクラウン(ボディ)というよりジュエル(核)担当として同行していただけだった。
そんな折り、前線から遠く離れたここを襲撃され、切り札は私を守って大破した。
…私なんか守っても。
他にも技術関係のチーフとか守るべき相手が沢山いただろうに、よりによって一番貢献の少ない私だった。
大破させた責任と称して私は自ら隊を抜け、ジュエルの秘密を探る旅に出た。
最初に着いたのは中立地帯の港町だった。
港町には戦時中にも関わらず、沢山の人が行き交っている。
見るからに素行の怪しい者もいれば、どこにそんな金があるのか豪奢な衣装を身に纏う者もいる。
「おぅ。金はあるのかい?」
海賊スレスレの船長がいきなり金の話を始める。
小さな袋を私が投げてよこすと、現金にもニィッと笑って
「どこまでも案内するぜ?」
と親指で船を示す。
開発部の下っ端とはいえ政府機関に引き抜かれたクチだ。
金だけはある。
実はそのズタ袋、高級な宝石が目一杯入っていた。
まさか、生で現金を持ち歩くワケにもいかず、宝石に変えてもらっていたのだ。
勿論、これだけというワケはない。
それはほんの一部だが、目眩ましには丁度いい量を入れてあった。
「まずはどこへ向かう?」
自ら船のハンドルを握り、振り向かずに聞いてくる船長に私は、
「街へ」
「!?」
「わ…わかったよ」
この近くで街と言えば彼処しかなかった。
…まさか引き返すワケないしね。
船でしか行けない難航不落の街、アクアセィル。
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