君といると楽しいからね

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「ところで日向さんはこんな時間にどうしたんだ?」 「ん? 忘れものだよ。これが無いと勉強が出来なくてね」  軽く笑いながら自分の机から筆箱を取り出し、俺に見せつける。 確かにソレ忘れたらやりたい事が出来ないよな。 「えと、そういや君名前は? クラスで何度か見掛けてるけど名前は知らないんだ」 いや、何度か見かけてる時点で凄い。大体の人は名前愚か俺の存在すら気付かない。だと言うのに一度でも見かけてるなら十分凄い方なのである。ましてや何度も見かけてるとなったら逆に何者だと聞き返したくなるぐらいである。 「あぁ、俺の名前は月影 零時っていうんだ」 「ん。月影君だね。覚えておくよ」 大人しめな可愛らしい笑顔を俺に見せてくる。 成程、こりゃ誰しも彼女に惹かれて仕舞う訳だ。 「それじゃあ僕は帰るね」 筆箱を納めた革で出来た鞄を手に取り、鞄を持つ方の手頸を右肩にのせる。おかげで鞄が宙ぶらりんだ。 「あ、あぁ……」 名残惜しい。実に名残惜しい。 久々の会話だからもう少ししていたいのだが彼女をずっと引き留める訳にもいかないだろ。 「じゃあな」 心の中で踏ん切りをつけ、溜息と共に彼女を送った。 ガチャンと扉を閉める音がこの一人の教室に響き切なくなる。 改めて思うけど一人は辛いな。慣れたと思ったが慣れるもんじゃないか。 ま、今更……か。
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