山の中の湖

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私は、住宅街から少し外れた場所にある、小さな森の中の喫茶店に勤めています。 お店の中には、開けられた窓から聴こえる、樹木の葉擦れの音。その樹木に泊まり羽根を休める、鳥のさえずり。時折聞こえる、獣の遠吠え。そして、お湯の沸く、シュンシュンという音。そんなものだけが聴こえてくる、静かな空間。 そんな空間が好きで、高校の頃から気に入って、バイトとして雇ってもらってから、ずっと、続けている。 この喫茶店のある森の持ち主であり、幾つものマンションも経営しているマスターのおかげで、お給料も、とても良い。 高校生の頃は、少なかったけれど、「大学に行くための、お金を貯めたい」という、バイトを探していた理由と、「この喫茶店の空間を気に入ったから」という言葉で、他のバイトをするよりも、格段に多くもらっている。 マスターの好きな物だけで造られた空間。其処にバイトして雇って貰えたという事は、私の事を気に入って貰えたという事だと思う。
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