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風の強さに一瞬よろめいて、湖に落ちそうになる。
慌てて、腰よりも低い位置にある手摺に手を伸ばして体をささえる。
「ほぅ…」
なんとか落ちずにすんで安堵の息を吐く。……しかし、木でできた橋には滝の飛沫によって苔が生えていて、私の体を支えきる事はできず、苔をむしりとるように、手に持ったまま湖に体が傾いていった。
バッシャーーン
大きく水飛沫を上げて、私の体は湖に落ちていった。そして、背中に背負った荷物の重みで、上に上がろうと足掻いているのに、どんどんと沈んでいく。
髪や着ている服、背中の荷物が、その内に含んでいた、空気が泡となり上へと昇っていった。
沈んでいっているのに、頭の中は、やけに冷静に泡を見詰めていた。そして、口の中に留めていた空気も、「ガボッ」という音共に水中を漂い上へと昇っていった。
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