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隼人の案内で見慣れぬ道に入って行く。
うわぁ、うわぁ。
わたし本当に隼人んちに行くんだ。
隼人の家はどこにでもありそうな、築十年くらいの、中流家庭の一軒家だった。
「自転車はそこに置いといて。部屋ぐっちゃぐちゃだから、ちょっと片付けてくる」
何も準備をせずに、咄嗟に思いついて家まで誘ってきちゃったんだろう。
こういうところ、隼人っぽいな。
玄関で待ちながら、落ち着かずにきょろきょろしてしまう。
うちとは違う家の匂い。
下駄箱の上には家族写真が並べられていた。
お兄さんが一人いるとは聞いていたけれど、兄弟そろってバスケをやっているみたいだ。
それから隼人そっくりのニカッとした笑いを浮かべているお父さんと、優しそうだけどしっかり者っぽいお母さん。
足元には、隼人が脱ぎ捨てていったばかりの靴が転がっている。
大きいなぁ。
まだ一年生だし、これからぐんぐん背も伸びるんじゃないかなぁ。
写真に写っているお父さんとお兄さんも、かなり大柄な人みたいだ。
それにしても人の気配がない。
誰もいないんだろうか。
しばらくして隼人がドタドタと階段を下りてきた。
「ごめん、お待たせ」
「あの、お家の人はいないの?」
「オカンはパートだし、兄貴もまだ大学なんじゃねーかな」
「そう、なんだ……?」
それってつまり、二人っきりってこと?
わたしのぎこちない反応に、隼人が今さらながらこの状況に気がついたらしかった。
「べ、別に変な意味は……」
隼人は何か言いかけて、でも途中で口をつぐんでしまう。
部活中はあんなにハツラツとしていて、大きな声で檄を飛ばしたり大笑いしたりしているのに、わたしと二人きりだと本当に大人しい。
でも、そんなのお互い様。
声がひっくり返りませんように、と願いながら、わたしの方から口を開く。
「隼人の部屋はどこにあるの?」
「あ……こっち」
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