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澪は美玖を連れ、ナースステーションに向かう。
「美玖ちゃん、ハンバーグ楽しみだね。」
「うんっ!ママのハンバーグ、はやくたべたいなぁ~。」
ニコニコした笑顔で、美玖は答える。
「美玖ちゃん、秋川先生。美玖ちゃんのお母様、待合室でお待ちです。」
ナースステーションに着くと、看護師が言う。
「ありがとう。すぐに向かいます。美玖ちゃん、行こっか。」
「うんっ!」
コンコン。
「失礼します。秋川です。野々宮さん、お待たせしました。」
「ママぁ!」
「野々宮さん」は声が聞こえた方にゆっくり顔を向ける。側に白杖。
美玖は思いっきり、母親に抱きつく。
野々宮さん。野々宮菜穂子。美玖の母親である。彼女は盲目である。
「美玖、そんな急がなくても、お母さんは逃げないから、大丈夫よ。ふふっ。」
クスリと笑みを零す。
「お待たせしてすみません。美玖ちゃん、すっかり仲良くなったお友達のお兄さんと、家に帰れるんだって喜んでました。」
「はい。最近は声が明るくなりました。私も嬉しくて。」
「美玖ちゃん、明るくなりました。笑ってくれるようになりました。美玖ちゃんの笑顔は、他の患者さんに元気を与えてくれて。では、そろそろ行きましょうか。玄関ロビーまでお送りします。」
「ありがとうございます。」
待合室を出て、玄関ロビーに向かう。
「美玖ちゃん。一度おうちに帰れるけど、お母さんの言うことを聞いて、良い子にしてるんだよ?」
「うんっ!みく、良い子にしてるっ!みおちゃんせんせー、バイバイ。」
「美玖ちゃん、またね。野々宮さん、気になることでも何でもいいので、いつでも連絡して下さい。」
「ありがとうございます。」
「いいえ。ではここで失礼します。」
美玖と母親は病院を後にした。
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