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ICU。患者のそばに医者が立っている。澪は近づいていく。
ER医の里原が言う。里原大樹。澪の同期で、ER医を努めている。
「秋川。患者の名前は山本翔太郎さん。お前の恋人だろう。事故に巻き込まれて、運ばれたときには、もう…。脳死だ。」
ガクン、と身体が崩れ落ちる。声を上げることも出来ないほど、驚愕している。次第に涙が溢れ、嗚呼。
里原は、その場に崩れ落ちた澪を立たせる。
「看護師に山本さんの家族へと連絡させた。もうすぐ母親が来る。一度ICUから出て、落ち着こう。」
里原に支えられた澪はICUから外へと出る。
同時刻。
「山本さんのご家族がお見えました。」
「翔太郎っ!」
「お母様ですか?」
「はい。」
「翔太郎さん、事故に巻き込まれて、意識不明の重体で運ばれました。手を尽くしましたが…。脳死です。」
「嘘ですよね?そんなの嘘よっ!翔太郎が脳死だなんて、そんなのあるわけないじゃないですかっ!嘘って言ってくださいっ!」
翔太郎の母、真里は、声を荒げる。
「残念ながら、嘘ではありません。」
「…っ!」
「こんな時に酷だと思いますが、翔太郎さん、臓器提供意思表示をされています。どうされるか考えてみてください。」
「そ、そんな…。しゅ、主人を呼びます…。」
真里はICUを出る。
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