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「充さんっ!」
「真里っ!翔太郎は!?」
「どうしよう、充さん、どうしようっ。翔太郎が、翔太郎がっ。」
「お、落ち着いて、真里。翔太郎はどこにいる?」
「こ、こっち…。」
真里は充に支えられながら翔太郎の居るICUへと向かう。
「秋川。落ち着いたら、行けよ。…野宮を呼ぶから。」
里原は言いながら、PHSをポケットから出す。野宮に、悪いが秋川を頼めるか?下の自販機前に居るから、と伝える。
「…里原君。ありがと…。」
「おう。…それ、ちゃんと飲めよ。」
ふわりとした笑みを浮かべる。
里原が去ると入れ代わりに野宮が来る。
「秋川先生。」
「野宮君…。翔太郎君が………脳死になっちゃった。」
「聞きました…。あんなに優しい人が…。」
「うん、優しい。すごく優しい…。翔太郎君、未玖ちゃんに会うの…、楽しみにしてて、未玖ちゃんに会うと、いつもっ…。」
はらり、はらり、と涙。
「…先生。」
「考えちゃうと…、駄目だね…。私…。」
「…。」
慶次は涙で濡れる頬に触れて、拭う事が出来ない。恋人ではないから。澪に想いを寄せる慶次。複雑な気持ちでいっぱいになる。自分に想いを寄せてくれていたら、なんて、「たられば」な事。そんな考えが、不謹慎で醜いとも思えてしまう。
「行きましょう。秋川先生。…あと、これ。拭いてください。」
ハンカチを渡す。
「ありがと…。」
澪は立とうとするが、ふらつき、慶次がおっと、あぶね、と反射的に抱き留め、澪は、ごめん、と一言を言い、そのまま委ね、支えられる形で歩き出す。
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