第一話

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「充さんっ!」 「真里っ!翔太郎は!?」 「どうしよう、充さん、どうしようっ。翔太郎が、翔太郎がっ。」 「お、落ち着いて、真里。翔太郎はどこにいる?」 「こ、こっち…。」 真里は充に支えられながら翔太郎の居るICUへと向かう。 「秋川。落ち着いたら、行けよ。…野宮を呼ぶから。」 里原は言いながら、PHSをポケットから出す。野宮に、悪いが秋川を頼めるか?下の自販機前に居るから、と伝える。 「…里原君。ありがと…。」 「おう。…それ、ちゃんと飲めよ。」 ふわりとした笑みを浮かべる。 里原が去ると入れ代わりに野宮が来る。 「秋川先生。」 「野宮君…。翔太郎君が………脳死になっちゃった。」 「聞きました…。あんなに優しい人が…。」 「うん、優しい。すごく優しい…。翔太郎君、未玖ちゃんに会うの…、楽しみにしてて、未玖ちゃんに会うと、いつもっ…。」 はらり、はらり、と涙。 「…先生。」 「考えちゃうと…、駄目だね…。私…。」 「…。」 慶次は涙で濡れる頬に触れて、拭う事が出来ない。恋人ではないから。澪に想いを寄せる慶次。複雑な気持ちでいっぱいになる。自分に想いを寄せてくれていたら、なんて、「たられば」な事。そんな考えが、不謹慎で醜いとも思えてしまう。 「行きましょう。秋川先生。…あと、これ。拭いてください。」 ハンカチを渡す。 「ありがと…。」 澪は立とうとするが、ふらつき、慶次がおっと、あぶね、と反射的に抱き留め、澪は、ごめん、と一言を言い、そのまま委ね、支えられる形で歩き出す。
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