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「先生、ありがとうございますっ!なんと申したら良いのか…。」
千尋が言う。
「あっ、あの。」
小百合が問う。
「何でしょう?」
「ドナーの方には会えないのでしょうか?」
「申し訳ありません。規則で会ってはいけないんです。」
「そうですか…。お礼が言いたかったのですが…。」
「お気持ちお察しします。移植が成功したら、ありがとうと思ってあげて下さい。」
「はい…。」
「では術前や術日についてお話します。」
移植に必要な説明を全て伝えた。
「移植が成功したら、ありがとうと思ってあげて下さい。」の言葉を反芻してしまう。まるで他人事みたいな台詞だな、と思ってしまう澪。愛しい人なのに、と。二度と会えなくなる、とも。しかし、「医者として」と関わり、そのスタンスで臨むのは、何度も思う。
説明が終わると、移植に向けて準備を進めていく。頭の中でシュミレーションを繰り返し行う。
準備が終わると、翔太郎の部屋に行く。
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