第二話

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オペ室に着く。 「野上尋人さん、24歳です。よろしくお願いします。」 後ほど、お迎えに行きます、と看護師が告げる。 オペ室での手術準備。尋人に点滴を打ち、麻酔の準備をする。 「野上さん、吸ってください。次第に眠くなっていきます。」 麻酔科医に言われ、従う。次第に意識が薄れ、堕ちた。そして手術が始まった。 翔太郎の心臓摘出手術と同時に行われる。翔太郎の心臓を澪率いるチームが摘出し、尋人の心臓摘出を行うチームに別れ、澪は翔太郎の心臓を摘出したのち、尋人の心臓に翔太郎の心臓を移植するという、長丁場のオペを実施する。 救命医の里原や慶次は、大丈夫なのだろうか、と心配をしていた。彼女の「考え方」の問題で、良からぬ事を考えるのでは、彼女はきっとそう思うだろう、と危惧する。いや、そんなことは、とも思う。ただ澪は頑なに、譲れない、と、守るんだ、と。あの小さな背中にどれほどの「想い」を背負っているのだろうか。 一方の澪率いるチームも翔太郎の心臓摘出手術を開始していた。 「これより山本翔太郎さんの心臓摘出を行い、その後、野上尋人さんに心臓移植を行います。」 次々と術技が繰り広げられる。華麗に素早く。まるで何かに憑依されたかのように、何もなかったかのように、凛としていた。涙を忘れたかのように。
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