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仕度の最終チェックをする。戸締り、火の元。
「行こうか。」
「うん。」
玄関前の鏡で服装のチェック。襟を正す。翔太郎は職業柄、カジュアルな服。
「かっこいいな。」
「ありがとう。澪の前ではいつもかっこよくいたいと思うよ。」
「翔太郎君。」
「さ、キスをちょうだい。」
「いってきます」のキス。同棲を始めてからの決まりごとで、お互いが「意識」をするために必要と、前に翔太郎が決めた。澪もそれと同じ思いだ。
触れては、触れる。何度も追われる。粘着質な触れ合い。
「な、長いよ。」
くすぐったくて、痺れる感覚に微熱を覚える。
「ごめん、出ようか。」
玄関の扉を開け、鍵をして、閉める。澪の手を引く。エレベーターホールに行き、ボタンを押して待つ。エレベーターに乗り込む。
密室な空間に二人きりで、箱の狭さに緊張感が走る。手は繋がれていたままで、上がる温度をいつまでも感じていたい、澪は思ってしまう。
キスの時の表情が切なくて愛おしかった。触れる「熱」も少し痛い。
そんなことない、まさか、そうなるの、いや、あるはずがない、と連鎖が始まってしまう。ない、あるはずがない。自分が信じないと誰が信じるの、と。
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