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「あら、懐かしい。」
マヨヒガに住む八雲紫は自宅の縁側で茶を啜りながら言葉を発した。
「貴方がここに来るなんて。どうゆう風の吹き回しかしら?」
少し顔を綻ばせながら言葉を繋ぐ。
「まさか貴方が●●になるなんてね。私も流石に驚いたわ。」
紫はじっと一点を見つめながら、今度は少し残念そうな表情を作る。
「ええ。まさかあの方が消えるなんて思いもしなかったわ。昔は良くお世話になったもの。」
そして、また紫は微笑みを浮かべる。
「そうね。あの方が消えたからこそ今貴方はここにいるんだものね。あの方に感謝しなくちゃ。」
紫は茶を一口啜り、ふぅ、と一息つく。
「募る話もこの辺にしましょう。で、どうして幻想郷に?」
少しの沈黙の後、紫は複雑な表情を浮かべた。
「そう。貴方を知る人間は居なくなった。だからこの幻想郷に……悲しいものね。どうして現代の人間は――」
紫はいいかけた言葉を止めた。
「……そうね。万物は忘れ去られる時が来るモノ。今の言葉は無粋だったわ。」
ため息を一つ吐き、紫は笑顔でこう言った。
「ようこそ幻想郷へ。ん?もう旅にでるの?まぁ、話はその旅が終わってからにしましょう。
では、いい旅を。」
紫がそう言うと、ふわりと地面から何かが浮いた。
そして、紫が茶を二口ほど啜り、空を見た先には一つの麦わら帽子が風に乗って何処かを宛の知らない旅に出ていた。
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