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涼子に視線を移すと、箱から赤く染まった頭部を取り出し抱き抱えていた。
突然の衝撃に驚き、数匹の蠅は辺りを飛び回っている。
「……なんで、どうしてこんなことに」
鼻が潰れそうな程の悪臭や、爛れてしまっている頬。
それらを全く気にしない様子で、変わり果てた娘を強く抱き抱える母親の姿が、そこにはあった。
この時点で涼子はルール違反だが、まだ前川の声は聞こえてこない。
「……和希。どうして?」
掠れた声で、頭部の髪を掻き分けながら小さく呟いた。
あの死体は和希で、間違いないようだ。
解体され腐乱していても娘だと分かるのは、やはり母親だからなのだろう。
「村山涼子様。お疲れ様でした」
娘の死に続き、母親の死へのカウントダウンが始まった。
運命は残酷だ。
この時ばかりは、そう思った。
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