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できたハンバーグを皿に載せ、白米とともにテーブルへと運ぶ。そして昨日の残り物であるサラダを出して、夕食の準備を終えた。
「遥、食べようぜ」
無表情のまま食事を始めた遥を見て、遼平も一口大に切ったハンバーグを口へと運んだ。
沈黙が支配するなか、遼平は考えていた。一体どのような企業なのかと。考えても分かるわけがないのだが、胸にシコリのように残る違和感を気持ち悪く感じていたのだ。
求人誌には勤務地も記載されておらず、応募の電話をかけた際に、明日の6時に川崎駅と告げられただけだった。時給の真偽とともに訊こうとしたが、一方的に切られてしまった。
川崎駅に集合なのだから、やはり勤務地も川崎なのだろうか。様々な憶測を立ててみたが、明日になれば全てが分かると結論をだし、思考を中断したのだった。
夕食後、遼平が洗い物をしている間に、遥は早々に眠ったようだ。
「……ごめんな」
狭いリビングに敷かれた布団で、寝息を立てている遥に向けて呟いた。16歳の遥は本来なら遊び盛りの年頃だ。しかし両親が他界して登校拒否に陥ってから、自分の殻に閉じ篭ってしまった。
金銭的な余裕がない今の状況では、遥のために何もしてあげられない。治療どころか、まともな生活も送れなくなってしまう。そのためにも、明日の面接には絶対に採用されなければならないのだ。
現在の時刻は21時。明日は朝が早い。この好機を逃さないためにも、早々に就寝することにした。
部屋の電気を消し、遥の隣に布団を敷いて横になった。瞑目すると睡魔は徐々に姿を濃くし、遼平を眠りへと誘(いざな)ったのだった。
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