25647人が本棚に入れています
本棚に追加
癌に蝕まれている。その言葉に里香は、眩暈にも似た感覚に襲われた。
両親を交通事故で失い、孤独となった里香を引き取り世話をしてくれた祖母。
「……助からないんですか?」
「そうですね。転移をしない内に手術をすれば大丈夫でしょう。しかし癌は進行が速く、あまり猶予をないと思われます」
「……猶予をどれぐらいですか?」」
険しい表情でカルテを眺めている医師に訊いた。里香は恩人である祖母を、どうしても助けてあげたかった。
「それは分かりません。しかし早ければ早いほど、助かる可能性が高いのは確かです」
「そうですか、それで手術の費用は?」
「現段階ではハッキリとした金額は言えません。保険には加入していないようですし。それに手術費以外にも、入院代もかかります。それなりの金額としか言えません」
いくらにせよ、きっと18歳の里香には払えない金額なのだろう。貯金もなければ、頼れる親族もいない。
「……必ず用意しますので、宜しくお願いします」
里香は深々と一礼をし、重い足取りで病院を後にした。
外に出た途端、蝉に鳴き声に囲まれた。普段は耳障りでしかないが、今だけは自分を応援してくれているように思えた。
「おばあちゃん、私が助けるからね」
病院を見据えながら呟き、里香はコンビニへと向かうことにした。頼れる人がいないのだから、自分で金を用意するしかないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!