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殺人狂が怖れる人物とは一体何者だろう。
疑問はあると思う。
しかし火鎚の登場はまた後のことになる。
その時にこそ殺人狂が震えて怖れる火鎚の存在を語ることにしよう。
物語の始まりはいつもあっけなく、それでいて伏線を残しつつ終了するものだ。
始まりが終了するというのもおかしな表現であるが、今はこれで正しい。
始と終は必ずしも対極な存在ではない。
むしろ酷似した存在であると言っていいだろう。
始まりながら終わり、
終わりながら始まる。
始まったと思ったときには既に終わっていて、
終わったと思ったときには既に始まっている。
全ての物事は始終、終始、始まりと終わりに包まれているのだ。
よってこの物語も終了しつつ始まることになる。
恋人形と殺人狂と周防成一(すおうせいいち)の物語。
どうしようもなく純粋で、悪徳で、闘争で、困惑で、恋愛で、不幸で、幸福な物語。
純粋な恋人形。
悪徳な殺人狂。
それぞれは闘争し困惑する。
それに付随する恋愛の結末は不幸が幸福、どちらか一択。
不幸かなんて分からない。
幸福かなんて分からない。
不幸で幸福で不幸福な周防成一はこれからどんな道を歩んでいくのか。
どのような結末になろうとも、それは彼の選択次第。
それでは瀬名五巳の物語の終わりによって始まった周防成一の物語。
とくとご覧くださいませ。
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