飛べない少年

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「え?」 '飛ぶ'の意味が理解できなくて、うまく答えられない。 この状況で'飛ぶ'というのは、おそらく朝のような行為を指すのだろうが、生憎僕は死にたいわけじゃなかった。 正確には、死を選択する勇気も度胸もない、というのが正しいが、そんな情けない話はこの際どうでもいい。 「飛びたいでしょ?」 確かめるように、いや、念を押すように彼女は尋ねてきた。 僕はその問いに頷いていいのだろうか? 体が固まり、何の反応を示すことも出来ない。 「ま、無理にとはいわないけど。」 そんな僕を見かねて彼女は踵を返した。 そして、数歩進んだところで、 「今夜、ここで待ってる。」 そう言うと、顔だけをこちらに向けて、 「気が向いたら来て。」 と、初めて見せた笑顔で言い残し、校舎へ戻って行った。
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