東堂詩織という少女

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それでも、 「行ってみるしかないよな。」 ふっ、と短く息を吐いて気持ちを切り替える。 そして、意を決して校門に手をかけた。 何とか門をよじ登り、とりあえず昇降口へと向かった。 しかし、田舎の学校とはいえ、それなりに安全は確保しているわけで、扉には当然のごとく鍵がかかっていた。 「開いてる訳無いか…」 わかっていたこととはいえ、こうも見事に行き詰まると、さすがに途方に暮れる。 ため息をついてドアにもたれ掛かった。 「どうしろってんだよ。」 悪態をついて天を仰ぐ。 すると、頭上に何やら張り紙のようなものが見えた。慌てて反転し、もう一度確認すると、 「保健室?」 セロテープで簡易的にとめられたルーズリーフの中央に、不釣り合いなほど綺麗な字で書いてあったその場所へ急ぐ。 恐る恐るその窓に手をあてると、 ガラッ、と。 事もなげに、異世界への扉が開く。 「マジかよ…」 しかし、ここまで来て躊躇ってもいられない。僕は土足のまま、カーテンで遮られた向こうへ踏み込んだ。 中に入ると、低く、重たい空気が僕を迎え入れた。 携帯の明かりを頼りに階段へと向かう。
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