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それは屋上にいた。学校の屋上、その縁に、堂々とそれは立っていた。
それがウチの生徒ではないらしいことは、近くの生徒の話を漏れ聞いて理解した。どうやら制服が違うらしいが、遠目ではよくわからない。
とにかく堂々としたその姿に、僕は目を離せずにいた。
どれくらいそうしていただろうか、額には汗が滲み、照りつける太陽に影ごと身体を焼き付けられて、一刻も早く日陰に逃げ込みたいのに、どうしても動くことができない。
あるいは魔法にでもかかってしまったかのように、その無法者にひき付けられてしまっていた。
共に動かず、その対峙には終わりがないかのように思われた。
だが、それもいつか必ず終わりが来る。屋上は出入り禁止の区域だし、何よりこれだけの騒ぎだ。教師が傍観しているわけがない。屋上ではもうすでに説得が始まっているかもしれない。
そうして事態は収束していくのだ。こんな騒ぎでさえ、何事もなかったかのようにあるべき日常に飲み込まれていく。
何も出来ず、何もしないまま、ただ指をくわえて見ていることしかできない。そんな自分が情けなくて悔しかった。
そのとき、屋上の主と目が合った気がした。
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