55人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
「発つ鳥後を濁さず、っていうでしょ?」
次の場所へ羽ばたくためには、後始末をしてからでないといけない。と彼女は言う。
本来の意味とは少しズレている気もしたが、大筋は納得できたので、追及はしなかった。
「飲み終わったら始めよ?」
その言葉に頷いて、ようやく飲料の蓋を開けた。
弾けるような音とともに放たれた清涼感は、炎天下ではしゃぎ疲れた体を巻き戻すように、しばらくぶりの潤いを与えてくれた。
喉を通る冷たい刺激に汗が吹き出す。
顔全体が熱くなっていたのは、きっとそのせいだと思う。
彼女も半ば上気したような顔で、炭酸を口にしていた。
こんなとき、自然と視線が口元に集中してしまうのは、思春期の男子としてはいかんともしがたい衝動で、
「ん?飲む?」
と、ありがたくも迷惑な申し出を引き出してしまうのも、仕方のないことなのだ。
当然素直に頷くこともできず、とりあえず視線を逃がして残っていた飲料を一気に飲み干した。
「さ、片付けよう。」
「あ、何?照れてるの?」
ねーねーと、笑みを浮かべながら聞いてくる彼女を従えて、抜け殻の回収にかかる。
なんとなく残念な気持ちが残るのも、仕方がないことなんだ。
きっと、たぶん。
最初のコメントを投稿しよう!