少年と彼女の日常

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「発つ鳥後を濁さず、っていうでしょ?」 次の場所へ羽ばたくためには、後始末をしてからでないといけない。と彼女は言う。 本来の意味とは少しズレている気もしたが、大筋は納得できたので、追及はしなかった。 「飲み終わったら始めよ?」 その言葉に頷いて、ようやく飲料の蓋を開けた。 弾けるような音とともに放たれた清涼感は、炎天下ではしゃぎ疲れた体を巻き戻すように、しばらくぶりの潤いを与えてくれた。 喉を通る冷たい刺激に汗が吹き出す。 顔全体が熱くなっていたのは、きっとそのせいだと思う。 彼女も半ば上気したような顔で、炭酸を口にしていた。 こんなとき、自然と視線が口元に集中してしまうのは、思春期の男子としてはいかんともしがたい衝動で、 「ん?飲む?」 と、ありがたくも迷惑な申し出を引き出してしまうのも、仕方のないことなのだ。 当然素直に頷くこともできず、とりあえず視線を逃がして残っていた飲料を一気に飲み干した。 「さ、片付けよう。」 「あ、何?照れてるの?」 ねーねーと、笑みを浮かべながら聞いてくる彼女を従えて、抜け殻の回収にかかる。 なんとなく残念な気持ちが残るのも、仕方がないことなんだ。 きっと、たぶん。
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