少年と彼女の日常

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後片付けというやつは、とかく時間がかかるもので、単純な作業のはずなのにかなりの労力を要するのは、暑さのせいだけではなかった。 思い出は懐かしむもので、名残は惜しむものならば、ついさっきまでの瞬間を留めておきたいと思うのは、ごくごく自然なことだろう。 それが、楽しい時間なら尚更だ。 鼻歌混じりで清掃をする彼女を尻目に、僕の方の作業はあまりはかどらなかった。 帰り道は予想通りの苦難で、消費した位置エネルギーを取り戻すべく、ひたすら自転車を押して坂道を歩いた。 行きはよいよい帰りは辛い、荷物と化すよチャリンジャー。 挑戦者たちは互いに声を掛け合い試練の道を上る。 午後の太陽は、天頂を下り、黄色を増して尚強く彼等を照らしつづけた。 そんな過酷な旅が、ようやく終焉を迎えようとしたその時、新たな試練が立ちはだかる。 「19:30まで電車がない…」 彼女の口から飛び出したのは衝撃の事実。 とは言っても、単線のローカル鉄道にはよくあることで、一本逃すと次は三時間後、なんてのはざらにある。 最近は電車を使うことが少なくなっていたから、そこまで頭が回らなかった。
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