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ともかくも、住人のスケジュールが時刻表に左右される地域に住まうことを忘れていた僕らは、しばし途方に暮れた。
19:30のやつに乗ったとして、駅に着くのは一時間後、家に着くのはさらに20分後。
夕飯には遅刻。下手を打てば捕まって尋問クラスだ。
「どうしようね?」
困っているはずの彼女は笑顔で問う。
その顔を真っすぐ見ていた僕は、一体どんな顔をしていただろうか。
誰もいないプレハブ駅舎で、軽くなった鞄とは対照的な身体を椅子に預けて、僕たちはそっと、どちらからともなく話を始めた。
幼い頃の話。
学校での話。
友達の話。
そして、僕たちの課題の話。
「答えは見つかりそう?」
半ば忘れかけていた事を尋ねられ、しばし返答に詰まる。
まあ、真面目に取り組んでいたとしても、結果は同じだったと思うが。
始まりの日に抱いた、あらゆる'なぜ'に対する答え。そんなものが、本当に存在するのだろうか。
「本当は飛んでない、とか?」
あれが夢か幻の類なら、彼女が今こうしている事にも説明はつくが、
「律は見てたんでしょ?」
現実はそんなに甘くないようで、安易な解答を提示することすら甘受してくれそうになかった。
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