憧れと嫉妬の間

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でも、妹にとってそんな姉は、皆に誇れる憧れの姉でした。 その気持ちは、テストの結果が出た後も変わることはなかったのです。 勿論姉も、そんな妹の努力や憧れを知っていました。 優しい姉の事です。心の内では妹の重荷になっているとでも思っていたのでしょう。何度か無理をしないように、と妹に諭した事もありました。 しかし、妹にとってみれば、それは憧れに近づく為の修練です。 夢へと導くその努力が、どうして辛いものでしょうか。 そうして、妹は修練に割く時間が多くなり、それに反比例して、二人が一緒にいる時間は、どんどん減っていきました。 精神的な距離というのは、どうやら物理的なそれに比例するようで、中学を卒業する頃には、満足に会話をすることもままならなくなってしまいました。 二人の間にできた溝も、一向に縮まることはありませんでした。 そして、多感な時期に突き付けられた現実は、やがて心の中にあった、憧れという強い気持ちの形までも変えてしまいました。 私だって出来るのに。 私だって頑張っているのに。 いつも称賛の的は姉の方。 産声をあげたほんの僅かな差が、今は決して埋まることのない大きな溝となって、二人の間に横たわっていました。
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