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その後のことはよく覚えていない。
担任が何かを取り繕うように用意された口上を述べ、臨時の全校集会が開かれた以外は、至極いつも通りだった気がする。
誰も朝のことに触れようとしなかったし、たとえ話の端に上ったとしても、それはその後に続く、長い沈黙の導入でしかなかった。
ただ淡々と、時間だけが過ぎてゆく。
その中で僕の目に飛び込んできた時刻は、まるで夢の中のように飛び飛びだった。
授業もいつも以上に透過率が高く、時折吹く、体温に近い不快な風のように僕の輪郭を撫でていくだけ。
気になっていたのは、朝のあの一瞬、一点のみ。
退屈だった水面に投じられた一石は、想像を超える勢いでその表情を変化させ、水面下に潜んでいた暗い感情を惜し気もなく際立たせた。
これが望んでいた非日常?
こんなファクターが現れることを、本当に期待していたのだろうか。
そんな問いを頭の中にぶらさげたまま、気が付けば、僕は屋上のドアに手をかけていた。
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