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もしかして、最初から何もなかったのではないか?
そんな疑問が脳裏をよぎる。あの夢のような、どこか実体のない感覚は、その確たる証拠ではないか?
そうだ、そもそも今日であることがおかしい。
わざわざ人が集まる登校日の初日、しかも衆目に曝された中での行為に、一体どんな意味があるというのだろう。
注目を浴びたいだけならば、もっと他の方法があるだろう。
本気で自殺するつもりだったなら、止められる可能性のある朝は避けただろう。
なら、どうして?
「ちょっと。」
と、突然声をかけられ、驚いて振り向くと、
「そこ、私の場所なんだけど。」
目の前に現れたのは、コンビニの袋をぶら下げた女子生徒だった。
「ねぇ、聞いてる?」
突然のことに頭が働かない僕を急かすように、その女生徒はにじり寄ってきた。
「そこ、どいてくれない?」
まさに自分の立っている場所を指差され、ごめんと慌てて横にずれた。
「どうも。」
と、慣れた様子でハンカチを敷き、その上に腰を下ろすと、もぞもぞと袋の中から何かを取り出そうとしている。
しかし、まさかここで昼食を摂るつもりだろうか。
無神経にも程があるだろう。
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