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「ちょっと待って。
じゃあ今まで僕が学習して来た
事は…全部、嘘だったの?」
リモに苛立ちが起きる。
この環境に育った彼には
真に怒りを覚える事象は
与えられていなかった。
感情を発露出来る様な状況は
プログラムされてはいたが、
人間性の育成が重視された
教育にあっては、怒りの感情
だけは抑制されて来たのだ。
リモに内面の変化が生じ始めた
瞬間であった。
『いや、そうではない。
君の学習内容は全て真実で
あるが、そこに登場した人類の
姿が調整を受けていたという
事に過ぎない』
「何故そんな事を…」
『君が種の多様性に順応出来る
状況を育成する為だ。
君が真実を知った時、
君は自分の姿に嫌悪感を
覚えるかも知れない。
《違い》…は人類の発展に
寄与した重要なファクターだ。
しかしそれを受け容れるには
君はまだ幼い。
だが今の君は姿の違いになど
何の抵抗感も無い筈だ。
君の人間性を崩壊させぬ為の
考え抜かれた方法なのだよ』
俯いたままのリモをボイスが
シートに促した。
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