私と彼と、甲板と。

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私と彼と、甲板と。

「なあ、なんで空って青いんだ?」 突然、甲板で寝ていたはずの青年に質問された。寝顔があまりに可愛かったのでついつい覗き込んだ瞬間だったので、思わず赤面しつつ後ずさる。 「わかりません。たぶん、天国へ墜ちた人達の涙かなんかじゃ、ないんですか?」 down to heavenなんてフレーズをつい最近小説で読んだばかりなので、少し冗談めかして言ってみた。もちろん本当の意味ではないし、太陽光が原因や他にもあった気がするが実はあまり知らない。 たぶん笑われそうな気がする。 「ふぅん……天国へ、ね。ロマンチストなんだな」 彼からの返事が想像していたのとは違い少し拍子抜けしたのと同時に、久しぶりにロマンチストという言葉を聞いたからか、どこかこの青年に興味を持った。 「また、来ますね。どうせ暇ですから」 そう告げて立ち上がると、彼は目を瞑りまた眠りについた。 「お互い、な」 彼もまた、暇を私同様持て余す人だった。
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