それは、鮮やかな

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「ん、…ディア、もう行くのか?」 「ああ、先に行ってる」 部屋を出ようとすると、中に居た男が声をかけた。 バロイ・ヘルバーン。 俺達のなかで、交渉事担当のヤツだ。 情報通で頭の回転が良く、心強い味方である。 「また後で…と、言いたい所だが一つ忠告」 「………なに?」 「さっきそこらをカメラとメモとボイスレコーダー持った奴らがうろついてたぞ。『奴隷解放の剣が戦友の墓参り』ってな」 「……どこから漏れたんだ、全く」 「アルビノ構成員が全員なんらかの赤い花を買って町外れの何処かへ集合…なんて、怪しまれない方がおかしいだろ」 『奴隷解放の剣』 『奴隷解放軍アルビノを率いて戦った英雄』 世間でのディア・アルセア、つまり俺の呼称だ。 つい五年程前まで、俺達は奴隷だった。 俺を含む十数人が解放軍アルビノを立ち上げ、反乱を成功させたことにより自由になった今に至る。 「アイツん所、知られたくないんだろ?適当に撒いてから行けよ」 「分かってる」 会話を終えると、俺は今度こそ部屋を出た。
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