第二章  庭先の影

4/6
前へ
/43ページ
次へ
 あたしは、ヒロの背中の方へ回った。 「え?お姉ちゃんが、帰って来たって?」  ヒロは、そう言って、振り返り、あたしを見上げた。  ヒロは立ちあがって、あたしの方を向き、 「おかえりなさい」  って、言った。  ヒロの頬が少し紅調していた。  ・・・それから、振り向いた。 「え?もう帰っちゃうの?」  と、悲しそうに言った。     誰も「いない」空間に向かって。    そう。  そこには、あたしの予想した『お面の子』なんかは、いなかった。  ただ「植え込」の後ろにある柿の木が、影をおとしているだけだった。    不意に、柿の木の枝陰と思った一部が歪んだ。  スーと木の陰からその一部が、離れたように感じた。  そしてその影は、庭の裏戸に通じる小道に折れた。    いや、そんな風に思えた。    そして。。。  小道を隠すように植えられた低木の上の縁(ヘリ)に、「鉄腕アトム」の面の頭についているツノ(アンテナ?)が、一瞬だけ見えた。  気のせいだったのだろうか?  ギーッ。  と、古くなっている庭の裏の戸がきしむ音がした。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加