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あたしは、ヒロの背中の方へ回った。
「え?お姉ちゃんが、帰って来たって?」
ヒロは、そう言って、振り返り、あたしを見上げた。
ヒロは立ちあがって、あたしの方を向き、
「おかえりなさい」
って、言った。
ヒロの頬が少し紅調していた。
・・・それから、振り向いた。
「え?もう帰っちゃうの?」
と、悲しそうに言った。
誰も「いない」空間に向かって。
そう。
そこには、あたしの予想した『お面の子』なんかは、いなかった。
ただ「植え込」の後ろにある柿の木が、影をおとしているだけだった。
不意に、柿の木の枝陰と思った一部が歪んだ。
スーと木の陰からその一部が、離れたように感じた。
そしてその影は、庭の裏戸に通じる小道に折れた。
いや、そんな風に思えた。
そして。。。
小道を隠すように植えられた低木の上の縁(ヘリ)に、「鉄腕アトム」の面の頭についているツノ(アンテナ?)が、一瞬だけ見えた。
気のせいだったのだろうか?
ギーッ。
と、古くなっている庭の裏の戸がきしむ音がした。
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