第二章  庭先の影

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「ヒロ、誰かと遊んでたの?」  自分の声が、あたし自身の耳にさえ、ふるえてひびいた。 「ねえ。誰とお話してたの?」    ヒロは、ふてくされたようにうつむいた。 「ねえ。誰かいたの?」 「別に」  ひどく冷たい響きのある返事だった。  そんなヒロの態度も、冷やかな物言(ものいい)にも、はじめて接っした。  戸惑いながらも、あたしは、ちょっと「むっ」となった。 「外に出るなら、部屋をちらかしたままじゃ駄目よ」  つい叱(しか)る口調になった。 「積木しまうのに何分もかからないでしょう?」   「余計なお世話よ」  え?  あたしは自分自身の耳を疑った。 「余計なお世話。ヒロはまだ積木で遊ぶんだもん」  すねた口調で言った。
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