第三章  ヒロと「あたし」

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 結局、何の証拠も出なかったようで、「事件」にはならなかったのだけれど。  お父さんは、「世間体が悪い」と、ものすごく怒っていた。。。 「最後の最後まで迷惑をかけて!」 と、自分の妹に対して凄く怒っていたけれど、本心では、とても悲しかったんだと思う。 …お葬式の後、涙をそっと拭いているのを、あたしは見た。  身寄りをなくした「ヒロ」はうちに引き取られることになった。    それも「ずいぶん」と大変な経緯(イキサツ)があったらしい。    保険金の受取人は、本来「ヒロ」になる。  でも未成年だから、「保護者」になる人が「実質上」そのお金を自由にできる。  保険金は「出せない」という保険会社と、ヒロの本当の「お父さん」の「親戚」と称するひとたちの間で、ゴタゴタが起きた。    結局今後「保険金」について権利が生じたときは、一切それを放棄して「自称・親戚たちに譲る」という条件で、裁判所の裁定を受けて、「うち」がヒロを養女にすることにした。    お父さんもお母さんも「働き者」だから、お金に困ることはなかったし、まだ幼い「ヒロ」が、そんな「醜い争い」に巻き込まれるのを、見かねたんだと思う。  半年前、ヒロが、「心身回復までの経過を診る」という理由で預けられていた「保護施設」から、保護司さんに連れられてやってきた日のことは、忘れない。  よちよち歩きで、不安そうに、あたしを見上げた目が、とっても澄んでいてきれいだった。  それまで「ひとりっこ」だった、あたしは、 「まるで、あなたの子みたいね」 って、お母さんに「からかわれる」くらいに、ヒロと「仲良し」になった。
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