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「いらねえよ」
「お面の子」の声が、小さい子とは思えないほど低く、けれどはっきりひびいた。
「そんなものはいらねえよ」
「おにいちゃん、何で?」
ヒロの声に悲しみがあった。
「そうよ。たまにはアイスくらい食べたって、ママにも、おこられたりはしないわよ」
「うるせえ!よけいなお世話だよ!」
え?
あたしは、少年の意外なことばに、「あ然」とした。
まえ、ちょっとあたしたちの間で「思考停止」っていう言葉が、はやったんだけど「言葉そのもの」みたいな感じになったんだ。
彼は、あたしを見上げた。
わずかに空(あ)いている「お面」の目の穴から少年の目が見えた。その目は赤く、炎に燃え上っているようだった。
「余計なお世話だといってるんだ!おばさん」
な!
なんですって!
こ、高校一年になったばかりのあたしを「おばさん!」ですって!
でも、あたしは、怒るより先に何だか背筋に「寒気(さむけ)」が走った。
「お面の子」の低い声には、強い憎(にく)しみがこもっているようにさえ感じさせられたからだ。
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