11人が本棚に入れています
本棚に追加
バサバサ!
と、突然、頭上で音がした。
あたしは飛び上るほど驚いて、天空を見上げた。
ただそれは、鳥が飛び立つ音だった。
目を元に戻したとき、すでに少年はいなかった。
ヒロが公園の出口の方へ目を、やっていた。
その目はうるんでいるように見えた。
あたしもそちらに目をやった。
足早に去っていく少年の後ろ姿があった。
背の小さな「お面の子」の姿は、すぐに見えなくなった。
公園の出口に通じる道はいったんゆるやかに登り、中途から下り坂になる。
門は見えない。
だから公園から出ていく彼の姿は、見えなくても当然なのだが、なんだか初夏に立つ陽炎(かげろう)の中に溶けて消えてしまったように感じた。
(第二章に続く)
最初のコメントを投稿しよう!