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「俺はさ、特別な人間なんだって、そう思ってたんよ」
仕事の休憩中に、同僚の山下はそう言ってきた。
ビルの四階、非常階段の所で一緒に弁当を食べている時の事だった。
「思ってたって事は、自分は特別な人間じゃないと?」
とりあえずは会話を成立させるために、そう返してみた。すると山下は空を見上げて言った。
「うん。俺には立派な羽があって、羽ばたけばどこへでも飛んで行ける……。そう思ってたんよ」
羽か……
山下は何か悩んでいるのだろうか?そんなに彼の事は知らないし、あまり深入りしたくはないが、とりあえず聞いてみた。
「何かあったのか?俺で良けりゃ相談に乗るけど?」
大したアドバイスもできないが、とりあえずは言っといた方がいいだろうと思い、そう言うと、山下はニコリと笑い、お礼を言った。
「ありがとう。でも、もう俺には羽が無いってわかったから……小さい頃から憧れてきた空を、俺は飛べないってわかったから……」
はぁ…なんか山下の言う事がよくわからないな……
いったい何があったんだ?何でそんな……哀しい顔をするんだ?
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