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「威嚇して悪かったな兄ちゃん。オレはパング刀を持った女を探してるんだが、見たことないか?」
明らかにあの女のことだろう。さっきより物言いが優しくなったがライの返事は変わらない。
「記憶にねーよ。そいつが何かしたのか?」
「こっちの話だ。言う気はない」
簡単には情報を漏らしてくれなかった。
「なら他にあたれ」
「ライ兄さーん!終わったから来てくださーい!」
「妹が呼んでるからこれで失礼」
「ああ。呼び止めて悪かった」
ライは川に向かって歩いていく。その背中を若はずっと見ていた。
「若頭。何で止めたんです?」
組員はまだ納得していない顔をしていた。だが若は再度殴る。
「お前ら組員なら喧嘩の相手を選びやがれ!下手なことしてたら殺されてたぞ!」
若頭は車の中から一部始終を見ていた。そして組員が拳銃に手をかけた瞬間、ライの目が変わったことに気付いたのだ。
『警戒の目』から『殺す目』に。
あれほどの目を持った人間は相当な手練れであると、幼き頃から組員を見てきた若は本能で悟っていた。
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