72275人が本棚に入れています
本棚に追加
「……降ろせ」
背後から声が聞こえた。正確には背中から、だったが。
「お目覚めかい、お姫様」
「お姫様、か。的を得ていない表現だ」
男らしい振る舞いを見せる女は地面に立ち、ライの腰にあるパング刀を自分の腰につけ直した。
「戦力に数えて構わないな?」
「わたし一人で十分だ」
刀を抜く。片手で見たこともない構えを取った。
「嘗めるなよ、ガキが」
五人がかりで一斉に襲いかかる。ヒュン、と音が素早く三回聞こえた。
瞬間、五人全員の体が真っ二つになった。血が吹き出し、辺りが血に染まる。
「……何をやっている?」
「ガキに衝撃的な光景を見せたくないんでな」
イリカは気絶していた。ライに手刀で眠らされていた。
女は周りを見渡した。
「ここはイセンか?」
「そうだ」
「そうか。わたしは、帰ってきたのか」
刀の血を払い納刀する。そしてそのままイセンの町に入っていく。
「名前くらいは、言ってくれてもいいんじゃないか?」
最初のコメントを投稿しよう!