1人が本棚に入れています
本棚に追加
「愛里姉ちゃん…よかった…ゴホッゴホッ…間にあった…約束しただろ?…ゲホゲホ…それに俺…」
その時、扉が閉まる合図が鳴り響き、愛里姉ちゃんは近くの乗降口から飛び乗った。
「俺は愛里姉ちゃんの事…」
全てを言い終えない間に扉が閉まり、愛里姉ちゃんを乗せた新幹線は走り出した。
残された俺は伝え切れなかった後悔と、勝手に出て来たために母親にこっぴどく怒られるはめになった。
愛里姉ちゃんが引越してから、しばらくはメールや電話でやり取りがあった。
だが時が過ぎる度に連絡は減り、気付いた時には年賀状の付き合いとなっていた。
そしてあっという間に10年の時が過ぎた…。
俺は喫茶店の軒下で、相変わらず降り続く雨を眺めていた。
「ったく…集中豪雨じゃねぇんだから…ι」
どんどん酷くなる雨に、俺は仕方なく喫茶店に入り、珈琲を頼んだ。
芳しい珈琲の香りが鼻腔を擽る。
懐かしい曲は、ずっとエンドレスで掛かっていた。
"カランカラン"
ベルが鳴り響き女性が入って来ると、何故か俺の席にやって来た。
「もしかして…要君じゃない?…覚えてないかな?」
最初のコメントを投稿しよう!