Singin' in the Rain

11/13
前へ
/15ページ
次へ
見上げるとそこには、昔の面影のある愛里姉ちゃんが立って居た。 「Σ愛里姉ちゃん?!…どうしてこの町に?」 「仕事の都合でね…。今はこの町で仕事してるの♪…要君も元気そうね♪」 愛里姉ちゃんは珈琲を頼むと、俺の前の席に腰を下ろした。 「あれから10年か…。あの時は来てくれてありがとう…高熱であの後、三日間寝込んだんだって?…本当に無茶するんだから…」 呆れた口調で愛里姉ちゃんはそう言った。 「どうしても…ちゃんと愛里姉ちゃんに伝えたい事があったから…」 まるで店内に流れる曲に後押しされるように、俺は意を決して話し始めた。 「……伝えたい事?」 「…うん…俺…愛里姉ちゃんが好きだったんだ。」 やっと言い出せた思いに俺はどこかホッとしていた。 10年以上の片思いだった。 あの日伝え切れずにずっと燻った思いは、次の恋愛へと進む事も出来ず、ただただ愛里姉ちゃんだけを思い続けていた。 もう会う事が無いとさえ思っていても…。 幸せに暮らしているだろうから、諦めるべきだと考えても…。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加