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"ポツ…ポツ…ポツ…サァァァ…"
「ついてねぇな…ι」
急に降り出した雨に、傘の無い俺は咄嗟に店の軒先に逃げ込んだ。
店内からはどこかで聞いたような洋楽が流れていた。
『その曲は愛里姉ちゃんが良く歌ってたな…』と考えながら苦笑を浮かべる。
愛里姉ちゃんは俺の家の隣に住んで居た。
ずっと好きで初恋の相手だった。
ガキの頃から俺の側に居て、悪さばかりしてた俺を心底心配してくれてたっけ。
俺はゆっくりと空を見上げた。
見上げた空は、真っ黒な雲のまま、泣いているかのように雨粒を降らし続けていた。
「やみそうにねぇな…ι」
そう一つ呟き、意識を店内に移動させると、小洒落た喫茶店では、のんびりとお茶を飲むカップルや女性達が見えた。
『そう言えばこの曲…愛里姉ちゃんと見た映画の曲だったな』
遠い記憶を辿りながら、俺は曲に耳を傾けた。
あれは俺がまだ中学2年の時だった。
2つ年上だった愛里姉ちゃんが、映画の感想文を提出するとかで、半ば強制に俺をレンタルビデオショップに引っ張って行った。
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