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それから愛里姉ちゃんは、あの曲を雨が降る度に口ずさむようになった。
「ねぇ愛里姉ちゃん…この前の映画の感想文どうだった?上手く書けた?」
俺の問い掛けに、愛里姉ちゃんはキョトンとした顔で見つめ返してきた。
「え?感想文?」
「ほら…二週間前に一緒にビデオ見たじゃん…提出期限は今日までだって言ってただろ?」
「…Σ!!…あι…あれ?もちろん提出したわよι」
慌てて取り繕う愛里姉ちゃんに、俺は詰め寄った。
「何隠してんの?…付き合い長いんだから、嘘ついてんのくらい分かるよ?」
俺の言葉に愛里姉ちゃんは俯いた。
些細な嘘をついた理由は何であれ、ずっと一緒に居たのに隠し事をされた方が辛かった。
「ごめんなさい…どうしても…どうしても…要君と思い出作りたかったの…。」
「…え?そんな事ならいつでも…」
「…あたし…引っ越すの…。おじいちゃんの具合が悪くて…田舎に帰るんだ。」
まるで頭を殴られたかのような感覚に襲われながら、俺は脳をフル回転させて、話すべき言葉を探していた。
まさか愛里姉ちゃんが居なくなるなんて…予想もして居なかった。
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