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漸く紡ぎ出した言葉は、消えそうな程か弱く、意味をなさないものだった。
「……いつ…引っ越すの?」
「……二週間後…。」
曇った表情で呟く愛里姉ちゃんは、まるで梅雨時の空のようだった。
いつ降り出すかわからない空のように、愛里姉ちゃんは涙を浮かべたまま、辛そうにただただ堪えていた。
「そ…そっかι…さι…淋しくなるなι…だけど…いつかまた会えるよ。」
何て言ったら良いか分からない俺は、逃げるように適当に話を合わせ、その場を立ち去った。
大好きな愛里姉ちゃんに気持ちを伝える勇気も、引き止める事も出来ないまま…。
それからと言うもの、俺は愛里姉ちゃんを自然と避け始めてた。
「ねぇ…要君…何で避けるの?話を聞いてよ!!」
「べ…別に避けてないよ。愛里姉ちゃんも引越しの準備で忙しいんだろ?」
避けていると言う行為に負い目を感じながら、過ごす毎日はかなり辛かった。
だけど『今になって気持ちを伝えても、上手くいくはずがない』と思っていた俺には、『さようなら』の言葉の綴り方だけを繰り返し考えていた。
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