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「そりゃ…忙しいけど…。…あ…あのね…要君…見送りには来てくれる?」
「……う…うん。見送りくらいは…」
頬を指先で掻きながら伝えると、愛里姉ちゃんはニッコリと微笑んだ。
「ありがとう…必ず来てね?…さ…最後くらい…ちゃんとお別れしたいし…」
『……最後…あと3日で、もう愛里姉ちゃんに逢えなくなる…。』
複雑な心境のまま約束を交わすと、手を振り立ち去る愛里姉ちゃんを茫然と見送った。
まるで意気地の無い俺を笑うように雨が降り出していた。
あっという間に3日が過ぎた。
"ピピピピッ"
鳴り響く体温計を取り出せば、デジタルは38.6℃を表示していた。
「全く…馬鹿ねぇ。…ずぶ濡れになって放置するからよ。今日はおとなしく寝てなさい。」
あの日、雨に打たれたまま立ち尽くしていた俺は、ギャグ漫画にありきたりな展開のように、風邪をひいて寝込んでいた。
母親は氷枕を持って来ると、
「じゃああんたの代わりに愛里ちゃんを見送って来るわね。…ちゃんと寝とくのよ?…お昼までには帰って来るから」
と言い放った。
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