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俺は掠れた声で、一つだけ母親に尋ねた。
「……ゴホッゴホッ…何時の新幹線…ゲホッ…だっけ?」
「11時発のよ。…!…良いからあんたはちゃんと寝てなさい!!…熱もあるし、愛里ちゃんにうつしてもいけないから。…良いわね!!」
母親の強い言い回しに、俺は黙ったままで首まで布団に潜り込んだ。
夢の中で愛里姉ちゃんはあの歌を歌っていた…。
とても寂しげに…。
そして愛里姉ちゃんは寂しげな表情のまま、
「さようなら。要君…。」
と呟くと、身体がふわりと浮き、空へと吸い込まれて行った。
「ま…待って!!愛里姉ちゃんっ!!俺…俺…愛里姉ちゃんが好きなんだよっ!!…だからどこにも行かないでくれっ!!」
気が付くとそこは、いつもと変わらない俺の部屋だった。
「……やっぱり行こう。」
ふらつく身体に鞭を撃ち、立ち上がると夏場なのにジャンパーを羽織る。
熱を帯びた身体にはこれで調度よかった。
居間には母親の姿は無く、既に出掛けた後だった。
「……ゲホゴホッ…愛里姉ちゃん…待ってて…」
俺は一言呟くと、ゆっくりと駅に向かって行った。
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