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駅では要の母親と愛里の母親が話していた。
「すみません…わざわざお見送りして頂いて…。」
「気にしないで下さいな。本当なら要も来るはずだったのに、あの子風邪ひいてしまって…。」
愛里は少し寂しげに俯いた。
頭の中では要が来るはずないと言う事は分かっている。
だが何処かで期待する自分がいるのだ。
「あと…30分か…。」
迫る時間に愛里は溜息をついた。
愛里からすれば一世一代の決心をして、自分の気持ちを告げるつもりだった。
だが告白する相手は来ないのだ。
「…愛里…そろそろ行くわよ?…それじゃあ大変お世話になりました。」
「あの…おばさん…要君にもよろしくお伝えください。」
愛里も慌てて頭を下げて、新幹線に乗り込み、自分の座席を探した。
キャリーバッグを上の棚に乗せ、ふと前方を見た愛里は目を丸くして、乗降口に走って行った。
駅のホームに着いた俺はぼーっとする頭のまま、愛里姉ちゃんを探し続けた。
「…はぁ…はぁ…愛里姉ちゃん…何処?…ゲホゴホッ…」
「Σ要君っ!!…大丈夫なの?また無理して!!寝てなきゃダメじゃない!!」
目の前に愛里姉ちゃんの幻覚が見えた。
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