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「封印解除。『オルトロス』起動」
夕闇に沈み始めている街の裏路地に、明かりを背に佇む青年の斜め前に伸びた影が、無数の細い触手のようなものを出してざわざわと動き出す。
「愚を知るがいい」
広がっていた影が一点に集まって、そこからスライムのように膨れ上がり、全高二mほどのドーム状になる。
そのてっぺんにひびが入り、花が咲くようにゆっくりと開きだした。
開いた隙間から、指、手のひらの順番に歪で大きな手が現われる。
その手の平にある切れ込みが開き、赤い瞳がぎょろりと現れた。
青年の前に居並ぶ、武器を構えた黒づくめの集団を見る。
黒づくめたちに動揺が走った。
「やれ。オルトロス」
青年の影から現れてオルトロスと呼ばれたその手の人差指が、黒づくめたちを指してバリバリと激しく赤い放電を放ち始めた。
「うわぁぁぁ!!」
黒づくめの一人が、手に持っていたナイフを放り投げて、逃げた。
それが発破になったように、続いて他の黒づくめたちも逃げていく。
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